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(4)非認知能力の効果測定と成果

1)効果測定

子どもたちの非認知能力がどれだけ向上したかという効果を測るため、STORIA では 観察調査を実施しました。

これは、非認知能力についての独自の指標を作成し、プログラム実施前と後に各項目 を測り、上下した項目を考察するという評価方法です。母数も少ない上、プログラムを 実施しなかった対象の測定もできないため、正式な評価とは言い難い部分もあります が、子どもたちの成長をしっかり観察したいという思いから実施しました。

結果は、全ての子どもたちが全ての項目において向上しました。(図表 5)

特に向上した項目は、『人と関わる力』「8言葉を使って気持ちを表現できる」「9相 手を助けたり、相手のために何かしようとする」でした。例えば、チームで行う難易度 の高い挑戦の中で、直面した問題を個人ではなく「チーム」で自ら話し合い乗り越える という場面が何度もありました。その経験が子どもたちの自信となり、ポジティブな発 言量が増え、かつ子どもたち同士でサポートし合いながらプロジェクトを成功に導こ うという思いと行動が強化されたと考えます。

また、『自分を見る力』の「2状況に合わせて行動する」項目も高くなりました。チ ームの一員として、今この状況で自分は「何をすべきなのか」と全体を俯瞰しながら自 分を見る力が高まったと思います。これには、誰かにコントロールされている「やらさ れ感」ではなく、主体的に行動に移している姿勢が重要だと思いました。一人ひとりが そう思うことにより目標達成へ向かい始める体験を得られたことは、大きな成長につ ながったと思っています。

この非認知能力について間違ってはいけないことは、非認知能力の項目に人それぞ れ「でこぼこ」はあるのが当たり前であり、その「でこぼこ」もその子の個性であると いうことです。これを大人がしっかりと認識する必要があります。決して、低いところ を課題として解決しようと思うことのないようにすることが大切です。

非認知能力項目

▼自分をみる力
① 思ったこと、いつもやってることを立ち止まれる 
② 状況に合わせて行動する

▼相手をみる力 
③ 相手が何故そんな気持ちであるか理解することができる 
④ 思っていることとは違う行動をしてしまうことあると理解している 
⑤ 相手が何故そんな行動をしたか考えることができる 

▼人と関わる力
⑥ 体験したことを振り返ることができる
⑦ 人と対立しても乗り越えようとする 
⑧ 言葉を使って気持ちを表現できる 
⑨ 相手を助けたり、相手のために何かしようとする

2)Tちゃんの成長のケース


T ちゃんは、学校の勉強やお友達のペースについて行けず、学校に通えませんでした。STORIA の活動場所には毎回参加してくれていましたが、口数も少なく、自分の気持ち を表現できずに悲しくなり、泣いている姿がよく見られました。

T ちゃんはスタッフから「パソコンで曲をつくってみない?」と声を掛けられまし た。最初はあまり興味が無かったようですが、一度やってみると、パソコンでの作曲が とても面白くなったようで、STORIA の卒業式に使う曲も作曲してくれました。

ある日、非認知能力向上事業で『ラジオ番組制作』をすることになりました。話すこ とが苦手な T ちゃんは最初は乗り気ではなかったようですが、ラジオ番組のオープニ ングとエンディングテーマの曲をつくって欲しいというお友達の依頼により、制作メ ンバーに入りました。

ラジオ番組名は、『男たちの人生相談』といい、悩みを抱えたリスナーへ本気で悩み を解決するという番組です。メンバーの提案により、「学校のクラスメイトからお悩み アンケートをもらおう!」ということになりました。

アンケートの実施には、学校の先生の許可を取らなくてはなりません。そこである学 校の先生に向けて、企画のプレゼンテーションをすることになりました。

しかし T ちゃんは学校に通えていません。T ちゃんの気持ちを思い図って、スタッフ は T ちゃんに「無理に行かなくてもいいんだよ。メンバーにお願いしてもいいんだよ。」 と伝えました。しかし当日、T ちゃんは自分の意思で学校に行きました。

後から聞いた話ですが、お母さんには「自分たちで企画したラジオ番組を先生に説明 するんだ」と、力強く話していたそうです。

子どもたちが学校の先生にプレゼンテーションを行う時がきました。

先生は、Tちゃんに聞きました。「この企画は君にとってどんな意味があるんだ?」 と。Tちゃんは「僕は学校に行けなくて毎日不安な気持ちで過ごしています。こういう 不安な思いをしているクラスメイトが、もしかしたら私以外にもいるかもしれない。そ ういう友達がいたら、僕は本気でその友達の悩みを解決したいです。僕も不安だから、 友達の不安な気持ちがわかるから。」

耳を澄まさないと聞こえないほどの小さな声でしたが、それでも T ちゃんは、自分 の思いをしっかりと先生に伝えました。

Tちゃんにとっては、学校に行くことすら大変な勇気が必要だったと思います。さら には自分が不安な思いで過ごしている中で、クラスメイトへの想いを馳せる Tちゃん の言葉と優しさに、付き添いをした STORIA のスタッフは涙を流しました。

ラジオ番組『男たちの人生相談』は、Tちゃんの作曲した曲と Tちゃんをはじめとするメンバーの力で大成功を収めました。

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