いま、貧困の中に置かれている子どもたちや家庭の状況はどうなっているのでしょう か。
新型コロナウィルスが蔓延する以前から、家計がひっ迫している状況にある家庭には、 非正規雇用の状態でダブルワーク、トリプルワークをしながら生計を立てている方もい ます。親御さんは家にいる時間や子どもと関わる時間が少ないため、子どもたちは一人 で、または兄弟姉妹だけで長時間にわたり留守番をしています。学校が休みである土日、 そして夏休みや冬休みは、子どもだけでいる時間がさらに長くなります。
親御さんのなかには、ダブルワークなどの過酷な生活を続けていくうちに、長時間の 仕事やストレス、子育てや家計のやりくり、将来が見えない不安などにさいなまれ、精 神的なバランスを崩す方もいます。
このような環境の中で子どもたちは、「子どもらしさ」を失っていきます。その結果、 「さびしい」という素直な感情を伝えられなくなったり、「あれがほしい」「これがした い」という素直な欲求を表現できなくなっていきます。
そして疲れ果てている親御さんを気遣ったり、また、お互い時間的・精神的余裕のな い中で気持ちがすれ違い、関係性が悪くなったりとすることもあります。
本来、人間形成の土台をつくる乳幼児期・就学期に、親との関りや多様な経験を通し て「自分を大切に思う気持ち(自己肯定感)」や「自分の可能性を信じる気持ち(自己効 力感)」、「相手を信頼する心」が育まれます。
しかし、貧困状態にある子どもたちは、「夕食を家族で一緒に過ごす時間」「自分の今 日の出来事や気持ちを聴いてもらう時間」「クリスマスやお正月などの家族が団らんす る季節の行事」「多様な体験や人との出会い」など、普通の家庭ではあたり前の日常、そ して人間形成に必要な「保護者と一緒に過ごすことで得られる安心感」が得られにくい のです。
そのような環境に長くいることで、子どもたちは「自分は大切な存在なんだ」「自分に はできる」という気持ちを失っていきます。その結果、自分や将来、そして人や社会に 対しても「あきらめ」の心を抱き、「無気力」になっていくのです。