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(1) 組織づくり

子どもたちと大人たち双方向の変化を生み出す居場所をどうしたらつくれるのかにつ いて、重要な要素となる「組織づくり」「場所(環境)づくり」「資金づくり」の 3 つの観 点で、私たちが経験から得た学びをお伝えしたいと思います。

居場所開設に向けての物理的な準備項目などについては、国や全国組織を中心に、多く の情報が整理され、無料で公開されています。こうした情報は下記にある参考資料を参照 してください。

ここではそのような準備項目としてはあまり触れられない部分を中心にお話ししたい と思います。

(参考)
子どもの居場所ネットワークいわて 「子どもの居場所づくりサポートブック」 

 ・京都市「子どもの居場所づくりのすゝめ」

1)子ども、そして関わる方々すべての「幸せ」を起点にした組織づくり

私たちが目指すゴールは、「子どもたち一人ひとりが自分らしく生きられ、幸せにな ること(すべての子どもたちのウェルビーイングを実現する)」です。

そのゴールを達成するには、STORIA に関わる方々の幸せも同時に実現する必要があ ります。なぜならば、大人たちが疲弊していたり、不幸せな気持ちの中で、子どもたち だけが幸せになることはあり得ないからです。

私たちは、関わる方々すべての「幸せ」を起点にした組織づくりを目指すため、スタ ッフや地域・学生・社会人ボランティア、プロボノの方々の個人のパーパス(※8)をとても 大切にしています。パーパスとは、VISION や MISSION の土台にある「目的や存在意 義・大切にしている価値観」です。

STORIA のパーパスは、「人は存在しているだけで価値があり、素晴らしい可能性を 持って生まれてきている」ということを体現していくことにあります。この団体のパー パスと各個人のパーパスが重なり合い、体現されていくことで「安心感・心の充足感・

やりがい・チャレンジする力」が自然と生まれてきます。 ここで大切なことは団体のパーパスと個人のパーパスが全て重なり合わなくてもい

いということです。重なり合わないところは団体の多様性や強みとなり、弱みが補われ、 新たな価値を生み出す源泉にもなるからです。

組織の VISION は、創業者やその作成時にいた人たちで作られるため、後から参加し た人やスタッフにとっては「自分ごと」として捉えにくい側面があります。一方、パー パスは、「私たちは何のために生きているのか・何のために生きたいのか」という一人 ひとりの根源的な問いから始まります。組織のパーパスと個人のパーパスが重なり合 った時、組織の VISION も自分ごととなり、かつ各個人の人生に豊かさと充実感が増し ていくのです。

「幸せ」を起点とした組織づくりのポイント

POINT1
VISION と MISSION の元となる組織のパーパスを深堀し明文化する

POINT2
関わる方々の個人のパーパスを考え、皆で共有する

POINT3
パーパスの重なりを見つけ、各個人のパーパスが体現される環境をつくる


POINT1

VISION と MISSION の元となる組織のパーパスを深堀し明文化する

1 つ目のポイントは、組織の VISION と MISSION の元となるパーパスを考え明文化す ることです。団体や組織の VISION と MISSION は、「どこへ向かい」「何をしてい くのか」という視点でとても重要です。しかし、実際にパーパスを考えている団体や 組織はそう多くないと思います。

VISION とは「実現したい理想の未来・社会」です。その VISION はどこから生まれ てくるかというと、本来はパーパスから生まれてくるものなのです。 自分の団体が「何のために存在する組織なのか」「社会的意義は何なのか」を深堀 し、根源的で本質的な価値観が明文化されることで、団体や組織の VISION と MISSION は、さらに強固なものへと変化していきます。


POINT2

個人のパーパスを考え共有する

2 つ目のポイントは、個人のパーパスが何か明らかにし、仲間と共有することで す。理事などのボードメンバー、スタッフ、ボランティアやプロボノなど、組織 に関わる方々が、自分のパーパスについて考えることで、内なるエネルギーを確 認することが出来ます。個人のパーパスが何か、分からない場合は「自分が嬉しいと感じることや、ワクワクすること、悲しいこと」など、自分自身の心が動く 場面を思い出すことが有効です。 メンバーと共有する際には、見いだされたパーパスを付箋に書き、優先順位を付 けた後に、皆で共有します。このプロセスによって、自分が大切にしたいことが 明確になります。同時に他の人のパーパスを聴くことで、自分自身のパーパスを 見直し、新たな気付きを得られます。仲間との相互理解が深まります。


POINT3

パーパスの重なりを見つけ、各個人のパーパスが体現される環境をつくる

3 つ目のポイントは、パーパスの重なりを見つけること、そして各個人のパーパ スが体現される環境をつくることです。 前途したプロセスを通して、自分がなぜこの団体に来たいと思ったのか、なぜこ の活動をしたいと思ったのかなどが自然に見えてくると思います。また、経営者 やマネージャーであるならば、関わっている方のパーパスが生きる環境をつくり たいという気持ちになることでしょう。もちろん、団体が置かれた状況によって は、一足飛びにそうした環境が整えられない場合もあるかもしれません。しか し、状況を見ながら、各個人のパーパスが生かされる環境を少しずつでも作って いくことで、一緒に活動する仲間の幸福度が増していくはずです。そして一人ひ とりの幸福度は、子どもたちへの好影響を生み出すのはもちろん、活動全体のパ フォーマンスや、仲間との信頼関係、団体のカルチャーや雰囲気など、細部にま で影響します。

2)自分らしさを尊重し関係性を大切にする組織づくり

変化を生み出す組織には、「パーパス」と同等に「自分らしさ」が尊重されること、 そして関わる人同士の「関係性」が豊かであることがとても重要だと、私たちは考えて います。

これまでの一般的な組織は、VISION を実現するために組織があり、その下に個人が あると位置付けられてきました。そのために私たちは「自分らしさ」よりも「組織から 求められる自分」でいることを無意識に行う傾向がありました。もちろん、そのような 組織や場面が必要なこともあります。しかしながら、心が豊かで幸せにいるためには 「自分らしさをそのまま表現できる環境と関係性」があることがとても大切です。その 理由は、そうした環境や関係性によって、人の心が解放され、ありのままに自由に生き られるからです。心が自由でいられるということは、自分と違った価値観を受容でき、 人に優しくできることにもつながります。

現場では、「子どもたちが大人の指示よりも自分の気持ちに従い自由に振舞っている 姿を見ると、心が穏やかでなくなる」という話をよく聴きます。そのような方のお話を 聞いていると、ご自身は小さい頃から大人の言うことをよく聞き、自分の想いよりも周 りのことを考え、生きてきたことがわかります。その方自身が「自分らしさをそのまま 表現できる環境と関係性」を得られなかったため、「自分らしさ」を優先させる子ども たちに対し、「自分の気持ちよりも相手の話や意見を聞くべきだ」という気持ちになり、 そうした心の状態に囚われていたことで、心穏やかではいられなくなってしまうので す。これは私たち大人によくある話です。

私たちは、パーパスを土台とした「VISION(目指す社会や未来)」に向かって「達成 するために何をすべきか(MISSION)」を考えますが、同時に、活動に関わる私たちの 『あり方』を共通認識として持つことがとても重要だと思っています。

その共通認識がフィロソフィー(哲学)です。フィロソフィーとは「全員が共有して 持つべき意識・価値観・あり方」のことであり、このフィロソフィーによって VISION、 MISSION の質が変わっていきます。

VISION目指すべき社会・未来
STORIA:愛情が循環する未来へ
MISSION達成するために何をするのか
STORIA:愛情と最高の機会の創出
PHILOSOPHY哲学・あり方
STORIA: Respect&Fun
PURPOSE何のために存在するのか
何のために事業を行うのかという存在意義

STORIA: 人は存在しているだけで価値があり、素晴らしい可能性を持って生まれてきていることを体現する

<STORIA のフィロソフィー『Respect&Fun』>

Respect:すべての人を尊重します

私たち STORIA は、『支援者や受益者、あらゆるステークホルダーの立場や世代を超え て人対人として尊重し合う』ことを大切にしています。「人として尊重されること (Respect)」は、人間の根源的なニーズであり、願いです。Respect を体現することに よって、STORIA の核となる価値、すなわち『個の受容』が生み出されます。

そして個の受容は「心理的な安全」の中で関係性が築かれるとともに、「自分らしさ を表現してもいいんだ」という安心感を与えます。

Fun:どんな時も楽しみます

社会課題を解決しようと本気で思えば思うほど、終わりが見えず、心身共に疲労感に苛 まれることがあります。しかしながら、人はパーパスに向かって進む時、受容されて自分 らしく生きる時に「Fun(楽しさ)」を感じます。また、「Fun」には多くの人を集める力が あります。一緒に活動している仲間たちの心に「Fun」を生み出す活動ができているか、 定期的に点検し振り返ることも大切です。

POINT1
自団体のフィロソフィー(哲学・あり方)は何かを考える

POINT2
できているかどうかをジャッジせず、そうありたいと願い続けることが大切


コラム】 どんな人が関わり、コミュニケーションをとっているの?


STORIA は、経営を担うボード(理事)4 名、現地で実務を行うスタッフ7名、現地スタッフ を支えるプロボノ 40 名、スタッフと子どもを支えるボランティア 100 名、STORIA の金銭 的・物質面での応援をしてくれているサポーター200 名、専門的な領域で組織を支えてくれ ているアドバイザー4 名で成り立っています(2021 年 4 月現在)。

様々なステークホルダーは、地元地域だけではなく、他県や海外にも居るため、コミュニケ ーションは主に SNS を使って行っています。

STORIA

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