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(1)子どもの生きるを支える事業

STORIA では、2018 年から、「生きる力=非認知能力」を育むことで子どもたちの可能 性を引き出すことにトライしてきました。非認知能力を高める要因は、机上の学びや暗 記などの単純な知識の吸収ではなく、子どもが自ら主体的・体験的に行うことにありま す。つまり、「生きた学び」であり、「生きるための学び」が非認知能力を高めるのです。

具体的には、「子どもたちのやってみたいを叶える!」プログラムを子どもたちと一緒 に開発しています。その方法は、次の 5つのステップに分かれます。

最初のステップは、子どもの観察です。これは、日ごろから子どもたちの興味関心を 観察し、「子どもたちのやってみたい!」という声をピックアップすることから始めます。 2つ目のステップは、テーマごとに 1日で終了できるプログラムを実施することです。

これによって「やってみたい」をカタチにする企画する力を育みます。
3 つ目のステップは、子どもとの対話です。2つ目のステップを通じて子どもたちが得 た体験をもとに、本格的に取り組みたい企画を子どもたちと共に考えます。1日で体験 できる企画を数回繰り返すことで、子どもたち自身から「これは本格的にやってみたい!」という意欲を喚起することがポイントです。
4つ目のステップは、長期的な企画の立案と実施です。ここからは具体的なプロジェ

クトを発足させ、子どもたちが企画からゴールまで主体的に実施します。子どもたちと 一緒にプロジェクトを発足させることがポイントで、これによって子どもたちのやる気 を引き出すと共に、プロジェクトを見通す力を育み、非認知能力の向上が飛躍的に進み ます。3 つ目までのステップとは異なり、このステップは長期間の場合は、約 3 か月程 度、掛かることもあります。

最後は実施と振り返りです。長期的な企画の立案と実施から得られた学びを、子ども たちと共に振り返ります。またここからさらに発展的な企画を考えることも大切です。

非認知能力向上に向けたプロジェクトを行う上で、私たちにとって重要なスタンスは、 「決して大人が与えるのではなく、子どもたち自ら作り上げることを信じ、サポートす ること」にあります。子どもたちは信頼され、任されることで自らの意欲をのばし、知 識を得たい、実現させたいという欲求が強まります。そのことが、非認知能力の向上に 大きくつながるのです。

非認知能力事業の開発プロジェクト

ここではこれまで行ってきたプロジェクトの一例をご紹介します。


1 子どもカフェプロジェクト -café yamatea-

プロジェクト期間::2019 年 8 月 21 日〜10 月 21 日
カフェ実施日:1 回目 2019 年 10 月 14 日/2 回目 2019 年 10 月 21 日
参加人数:子ども10人、ボランティア・スタッフ10人

◼目的
1 失敗を恐れず困難を乗り越える経験をする
2 違いを受け入れ、チームで協働する経験をする 3 目標に向かって挑戦する経験をする

◼ プロジェクト概要

・  子どもたちの「お金を稼ぎたい」という声から生まれた企画。

・  子どもたちにとって身近な商いである「カフェ」をテーマにし、ショップコンセプトからマーケティング、商品開発、収支計画、事業プラン作成、資金 調達、商品製造、販促、当日のオペレーションまで、実際のお金を用いて子 どもたちが主体的に実施する本格的な起業体験プログラムを行った□成果 1困難を乗り越える経験

・ メンバーとの衝突という困難に直面しながらも、子どもたちの中で話し合い を行う等、その状況を乗り越えたことで、自分に自信がついた。

2チームで協働する経験

・  カフェでの売上目標という一つのゴールがあることで、自然と他メンバーの 仕事をサポートし合う様子が見られた。

・  自分の得意分野を他メンバーの不得意分野のサポートとして価値提供するな ど、自分自身の強みを活かし合う関係性が見られた。 3目標に向かって挑戦する経験

・  カフェ開催を2回にしたことで、1回目の売上結果(目標に届かず)を踏まえた後の子どもたちでの振り返りミーティングは、自然と客単価アップ、回 転率の改善などの議論となっており、大人が介入せずとも自発的に学年を超 えてディスカッションが行われた。

・  2回目のカフェ開催へ向け、1週間という短期間の中で新商品を追加し、回 転率アップのための店頭オペレーションを改善した。

・  一連の流れでは全て子どもたちが自発的に動いており、役職を超えて協働し ながら目標達成へ向かう姿が見られた。

・  「お客様を笑顔にするカフェ」という自分たちで決めたお店のコンセプトか らぶれず、お客様に喜んでもらえる経験を通して、働くことの本質と楽し さ、大変さを感じることができ、お金をいただくことの意味を体感した。

◼ 成果が上がった理由

1.伴走する大人のスタンス

・  子どもたちにとっても大人にとっても難易度の高いプロジェクトだったが、カフェ開催という「手段」を「目的」と捉えることなく、子どもたちにひた すら寄り添い、助言者としてのスタンスを貫けたことで、子どもたちは自ら 考えて発信し、行動するという経験を得ることができた。

・  大人たちが本気で取り組んでいたことで、子どもたちにも火が付き、本気度 高く取り組むことができた。

・ 一つ一つのタスクに向き合う姿を大人がしっかりと観察し、常に成長ポイン トを本人にフィードバックすることで自分に自信を持ち、より一層積極的に 取り組む、プラスのサイクルを作れた。

2. 明確な目標設定

・  売上、利益目標という、子どもたちにとって分かりやすい定量目標を設定で きたことがモチベーションになっていた。

・  カフェ開催を2回にしたことで、自然と PDCA 思考をする環境が整っていたこともあり、2回目へ向けての目標再設定まで子どもたち自身で実施して いた。

3. 役割意識の高さ

・ コアメンバーにはそれぞれ役職を付け、名刺も作成したため、自分の役割に対しての責任感を持つことになった。各々が本気で取り組んだ結果、大きな 衝突も起こったが、衝突から回復する中で仲間感が強化され、支え合うチー ムへと変化を遂げることができたため、やり切ることができた。

*別添写真一覧参照


2 子ども Radio プロジェクト -男たちの人生相談-

日時:2020年1月〜2020年3月
参加人数:子ども 4 人、ボランティア・スタッフ 5 人

◼目的
1. 新たなチャレンジの中で仲間と協働する力の醸成
2. 発想を形にする実行力の醸成

◼ プロジェクト概要

・  子どもたち自ら制作した音楽を活用できないかと企画したラジオ番組プロジェクト。

・  番組内容、企画、準備まで子どもたちが自ら考え実施。本物の収録スタジオをお借りし、本物のDJと編集者へ当日のディレクターをご依頼した。

・  事前にディレクターにラジオ番組の企画概要をプレゼンテーションし、企画内 容についてフィードバックをもらい、STORIA の寄付者やボランティアに企画のための「お悩みアンケート」を収集。台本を作成してリハーサルし、収録を実施

した。 

◼成果

1. 子どもたち自ら制作した音楽を活かせる機会ということもあり、番組の話を した瞬間から企画アイディアが湧くように出ていた。

2. 番組内容についてのブレストでは、各々が自分の考えを主張でき、チームとし て一つの案に子どもたちの中でまとめていた。

3. このプロジェクトを実行・成功させたいという思いから、苦手な大人(教師) に対してもしっかりと自分の意見として、このプロジェクトの目的と学びを プレゼンテーションできた。

◼ 成果が上がった理由

・  その道のプロの方に、「子ども扱い」せず真剣に向き合っていただいたこと、寄り添う大人も子どもたちと「やる」と決めたことを共に本気で取り組む姿勢が子どもたちにも伝わったからこそ、真剣味が増していった。

・  普段接したことのない大人との接点の中で実施したプレゼンテーションとい うチャレンジはハードルが高かったが、やり切ったからこそ自信となった。難 易度の高いチャレンジを大人の見守りの中で子どもたち自身が自ら実践する ことが重要。

*別添写真一覧参照


3. オンラインショップ・プロジェクト -りゆひま-

日時:2020年9月〜2020年3月
参加人数:子ども 4 人、ボランティア・スタッフ 3 人

◼目的

1. 商いを通じた他者視点・共感力の醸成

2. 発想を形にする創造力・実行力の醸成
3. コロナウィルス感染症によるリアルな接点が少ない中、オンラインツールを通して人との繋がりを実感すること

◼ プロジェクト概要

・ 新型コロナウイルス感染症拡大により延期となってしまったカフェプロジェクトのメンバーが、コロナウィルス感染症の終息に見通しが立たない中でも、「オンラ インショップ」であれば商いというチャレンジができるのでは、と考え自ら企画し たプロジェクト。

・ メンバーそれぞれがデザイナーとなって手作りでデザインしたトートバッグを通 販サイトにて販売するプロジェクト。商品企画、仕入れ、製造、プロモーションま で自らが考え創造した。

◼成果

1. 明確な役割分担をしなかったことで、場面場面に必要なタスクをメンバー同士でサポートし合いながらやり遂げていた。

2. スタッフが実施しようかと思っていた「商品撮影」についても、子どもたちが分たちで撮影することになり、サポート側の想像を遥かに超える素晴らしい写真(味のある写真)を撮影することができた。

3. オンラインショップがオープンし、初めて販売した瞬間に「お客様」というオンラインショップの向こう側にいる人の存在を心底実感した様子だった。それ以降、商品製造においても、常に「お客様」を片隅で意識しながら製作していた。 

◼ 成果が上がった理由

・  役割分担をあえて行わなかった。その結果、役割に縛られることなく、すべての タスクを自分ごと化でき、自然とお互いをサポートし合う雰囲気が生まれた。

・  すべてのプロセスに、大人が介入しなかった。わからないことが出た際に、調べ る方法のみ提示するのに徹したことで、当初はすべてを聞こうとしていた子ども たちが、スタッフのスマホや PC を使って自ら調べるようになった。

・  おこづかいとして現金を手にする経験と、自ら時間をかけ、思考を巡らせながら 創作したものが売れて手にする現金と、同じ金額でもその重みが全く違って感じ た様子だった。売上という現金になるまでの過程をすべて自分たちで考えたから こそ、お金を手にすることの難しさを感じていた。

◼ 今後に向けて

本プロジェクトを実施したことで、子どもたちに新たな「やりたい」が生まれた。オリジナルブランドを立ち上げ、ブランドコンセプトからロゴ、商品コンセプト、 デザインまで一貫して創り上げてみたいとのことだったので、来年度のプロジェ クトとして実施していきたい。

*別添写真一覧参照

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